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2026.07.06

病院設計で"失敗しない"! 5部門のゾーニングと設計事務所の選び方

病院設計で

「病院を新築・改修したいけど、どこから手を付ければいいの?」「設計事務所ってどう選べば良いの?」 病院の設計・建築は、患者さんの快適性、スタッフの働きやすさ、そして病院経営の成否を左右する重要な要素です。 本記事では、病院設計で"失敗しない"ために、設計事務所の選び方から費用相場、設計時に押さえておきたいポイントまでを分かりやすく解説します。 理想の病院を実現するための第一歩を踏み出しましょう。

この記事では、設計事務所の選び方に加えて、病院設計で最初に決めるべき5部門のゾーニング、規模が大きい案件で発生する開発費、そして費用を抑えるときにどこを削るべきかまで解説します。

1. 病院設計の基本

1. 病院設計の基本

病院設計は、患者とスタッフにとって最適な環境をつくり、病院経営を成功させるための重要な要素です。このセクションでは、病院設計のプロセスと、設計において考慮すべきポイントを解説します。

1-1. 最初に決めるのは、5部門のゾーニング

病院設計で最初に、そして最も重要になるのが、5部門のゾーニングです。外来、診療、病棟、供給、管理。この5つの部門を、どのような割合で、どのような構成にするのかを決めるところから設計は始まります。

ここでバランスを崩すと、そのあと動線をどれだけ工夫しても、内装をどれだけ整えても、病院設計の根本から揺らぎます。逆に言えば、ここさえ正しく組めていれば、後の判断はかなり楽になります。

それぞれの部門が担うものを整理しておきます。

  • 外来は、患者さんが日々出入りする部門です。受付、待合、診察室、処置室などが入ります。
  • 診療は、手術室、検査、放射線、内視鏡、リハビリなど、外来と病棟の両方から使われる部門です。
  • 病棟は、入院のための部門です。病室、スタッフステーション、デイルームなどで構成されます。
  • 供給は、中央材料室、給食、洗濯、物流など、病院を裏側から支える部門です。患者さんの目には触れませんが、面積は意外に大きく必要です。
  • 管理は、事務、医局、会議室、更衣室など、運営のための部門です。

この5つの割合を決めないことには、必要な延べ面積が出ません。そして延べ面積が出なければ建設費も出ません。つまり、ゾーニングが決まらないうちは事業計画も立てられない、ということです。

いまの使い方を理解することから始める

割合を決めるときに、いきなり理想像から入ってはいけません。まず、いまの病院がどう使われているのかを理解するところからです。

どの部門が手狭になっていて、どこに余裕があるのか。外来患者数と入院患者数の比率はどうか。平均在院日数はどれくらいか。供給部門が実際にどれだけの面積を使っているのか。現状を数字で押さえないと、新しい建物でも同じ窮屈さを再現することになります。

診療報酬の現在と将来から逆算する

そのうえで、現在の診療報酬と、将来的に予測される方向性を考慮して各部門を設計していく必要があります。

診療報酬は病院の収益構造そのものです。どの機能を厚くするかは、そのまま経営判断に直結します。病棟の区分を変える、外来を絞って入院に寄せる、在宅に軸足を移すといった方針の違いが、必要な部門の割合を大きく変えます。

難しいのは、建物は一度建てれば数十年使うのに対して、診療報酬は数年ごとに変わるという点です。いまの報酬体系だけに最適化した建物は、改定のたびに使いづらくなります。

ですから、5部門の割合を決めるときは、将来この部門を広げたくなったらどこに伸ばせるのか、この病棟を別の区分に転換するとしたら何が足りなくなるのか、というところまで議論しておいてください。ゾーニングは、面積配分であると同時に、将来の選択肢を確保する作業でもあります。

1-2. 病院設計のプロセス

病院設計は、計画・設計・施工・監理という4つの段階を経て進められます。それぞれの段階で、専門的な知識と綿密な連携が求められます。

  • 計画段階病院の規模、診療科目、必要な設備、予算などを決定します。将来的な拡張性や地域ニーズへの対応も、この段階で考慮しておくことが重要です。経営戦略に基づいた詳細な計画が、その後の設計を左右します。
  • 設計段階基本設計と実施設計を行います。基本設計では病院全体のレイアウトや主要設備の配置を決定し、実施設計ではより詳細な図面と仕様を確定します。設計事務所との密なコミュニケーションが不可欠です。
  • 施工段階設計図に基づいて実際に病院を建設します。施工業者との連携はもちろん、設計事務所による工事監理も重要です。品質管理を徹底し、設計通りの建物が完成するよう努めます。
  • 監理段階施工が設計図通りに行われているかを確認し、必要に応じて設計変更や是正を行います。完成後は設備の動作確認を経て、関係者への引き渡しを行います。

1-3. 病院設計で考慮すべきポイント

病院設計では、患者とスタッフの安全性と快適性を最優先に考える必要があります。特に重要なポイントを以下に挙げます。

  • 患者動線とスタッフ動線患者とスタッフの動線を分離することで、感染リスクを低減し、業務効率を向上させます。診察室、検査室、手術室、病室など、それぞれへのアクセスを最適化することが重要です。
  • バリアフリー設計段差の解消、手すりの設置、多目的トイレの整備など、高齢者や障がいのある方が利用しやすい設計を徹底します。バリアフリー新法(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)など関連法令への適合も確認しましょう。
  • 感染症対策換気システムの導入、ゾーニングによるエリア分け、抗菌・抗ウイルス素材の使用など、感染症対策を強化します。
  • 採光と照明自然光を積極的に取り入れ、明るく開放的な空間を創出します。適切な照明計画により、患者の不安を軽減し、スタッフの作業効率を向上させます。
  • 省エネ設計断熱性能の高い素材の使用、太陽光発電システムの導入、LED照明の採用などにより、ランニングコストを削減し、環境負荷を低減します。

2. 設計事務所を選ぶ前に

2. 設計事務所を選ぶ前に

病院設計を成功させるためには、設計事務所の選定が非常に重要です。このセクションでは、設計事務所を選ぶ前に押さえておきたい、専門性と費用・予算の基本的な考え方を解説します。

2-1. 病院設計の専門性

病院設計は、特殊な専門知識と経験が求められる分野です。医療施設特有の法規制(建築基準法、医療法、消防法など)、患者とスタッフの動線計画、最新の医療設備への対応など、考慮すべき点が多岐にわたるためです。設計事務所を選ぶ際は、病院設計の実績が豊富で専門知識を持つ事務所を選ぶことが重要です。ウェブサイトやポートフォリオで、これまでにどのような種類・規模の医療施設を手がけてきたか、得意分野は何かを確認しましょう。医師や看護師など医療系の専門家との連携体制を構築している設計事務所であれば、より現場の実情に即した設計を期待できます。

はっきり申し上げますが、病院設計は完全に専門分野です。病院設計の経験がない設計者を選ぶことは、かなり致命的な選択になります。

クリニックであれば、医療施設の経験が浅くてもある程度は形になります。しかし病院は、抱える部門の数、関わる法規制、設備の複雑さが桁違いです。5部門のゾーニングをどう組むか、部門間の動線をどうさばくか、供給部門の面積をどれだけ見込むか。こうした判断は、経験の蓄積がないと出てきません。

そして病院の場合、間違いに気づくのは竣工後です。そこから直すには、部門ごと動かすような改修が必要になります。病院設計の経験が豊富な設計事務所を選んでください。

2-2. 費用と予算の考え方

病院設計には、設計費用、建築工事費、設備費、その他諸経費など、様々な費用が発生します。まず予算を検討する際は、病院の規模、構造、設備、デザインといった要素を総合的に考慮する必要があります。設計事務所に見積もりを依頼する際は、要望をできるだけ具体的に伝え、費用内訳を明確にしてもらいましょう。比較検討する際は設計費用だけでなく、工事費やその他の費用も含めた総額で予算内に収まるかを確認することが大切です。契約時には、設計変更が発生した場合の費用や追加費用の条件についても事前に取り決めておくと、後々のトラブルを避けられます。

3. 設計事務所の選び方

3. 設計事務所の選び方

3-1. 実績と得意分野の確認

病院設計の経験が豊富で、類似の医療施設を手がけた実績がある設計事務所を選ぶことで、スムーズなプロジェクト進行と質の高い設計が期待できます。病院の規模や診療科目、求められる機能によって最適な設計事務所は異なるため、過去の設計事例を通じてその事務所が得意とする分野やデザインの傾向を把握しましょう。高度な医療機器への対応を得意とする事務所、感染症対策に強い事務所、省エネ設計に長けた事務所など、事務所ごとに強みは様々です。自院のニーズに合った得意分野を持つ設計事務所を選ぶことが、質の高い設計への近道です。

3-2. 設計事務所とのコミュニケーション

設計事務所との円滑なコミュニケーションは、病院設計を成功させるための鍵となります。病院の設計は、経営者や医療従事者など多くの関係者との打ち合わせを重ねながら進められるため、要望や課題を正確に伝え、認識のズレをなくすことが重要です。担当者との相性が良ければ、気軽に相談でき密な連携を図ることができます。定期的な打ち合わせの機会を設け、進捗状況や課題を共有しながら、設計事務所の専門的な意見も積極的に取り入れていきましょう。

3-3. 費用と契約内容の確認

設計費用は設計事務所やプロジェクトの規模・内容によって変動するため、複数の設計事務所に見積もりを依頼し、費用と提案内容の両方を比較検討しましょう。見積もりを比較する際は、設計費用だけでなく構造計算費用や申請費用なども含めた内訳を確認します。契約内容についても、設計範囲、設計期間、費用の支払い方法、設計変更時の対応などを明確にしておくことで、後々のトラブルを回避できます。特に設計変更や追加費用が発生する場合の条件は、契約前に必ず確認し、不明点は納得いくまで質問した上で契約を締結しましょう。

3-4. コンサルタントを入れ、担当者で見極める

病院設計では、コンサルタントが入っているケースが多いと思います。入れるのであれば、その役割をはっきりさせて委託してください。

  • 設計事務所の選定。候補の洗い出しから、提案内容の評価まで
  • 工事業者の選定。入札の組み立てと、見積もりの妥当性の判断
  • コスト管理。設計が進むにつれて膨らむ費用を、予算内に引き戻す役割
  • 実力の管理。提案どおりの品質が実際に出ているかを確認する役割

そのうえで、設計事務所を選ぶときに見ていただきたい視点があります。

大手の設計事務所であれば、事務所としての能力に大きな差はありません。図面の品質も、法規制への対応も、一定の水準は担保されています。

では何で差がつくかというと、どういう担当者がアサインされるかです。同じ事務所でも、担当者が変われば進み方はまったく変わります。会社名で選ぶのではなく、実際に担当する人に会ってから決めてください。契約の途中で担当者が交代する可能性があるかどうかも、事前に確認しておくとよいでしょう。

3-5. 失敗しない病院設計は、結局コミュニケーションで決まる

多くの病院設計を見てきて思うのは、うまくいくかどうかは最終的にコミュニケーションで決まる、ということです。

病院にはたくさんの部門があります。外来、病棟、手術、検査、放射線、薬剤、リハビリ、栄養、そして事務。この一つひとつの部門としっかり話をして、一つひとつ詰めていかないと、必ずどこかで漏れます。

経営層とだけ話して決めた図面は、現場では使えません。使う人が納得していない建物は、竣工した瞬間から不満の対象になります。

ですから、コミュニケーションを取ることを重視している設計者かどうかを、しっかり見定めてください。部門ヒアリングをどう回すのか、出てきた要望の優先順位をどうつけるのか。そこまで提案してくる設計者であれば、信頼して進められます。

みんなで良い建物を作っていく。病院はそういう作り方が必要な建物です。

4. 病院設計の費用相場と内訳

4. 病院設計の費用相場と内訳

病院設計における費用は、病院の規模、構造、設備、デザインなど様々な要素によって大きく変動します。このセクションでは、費用の内訳と、費用を抑えるためのポイントを紹介します。

4-1. 費用の内訳

病院設計にかかる費用は、大きく設計費用、建築工事費、設備費、その他諸経費の4つに分類できます。

  • 設計費用設計事務所に支払う費用です。基本設計、実施設計、工事監理業務など、設計プロセス全体にかかる費用が含まれます。一般的な目安として建築工事費の10%〜20%程度とされることが多く、総工事費の規模が小さいほど料率は高くなり、規模が大きくなるほど料率は下がる傾向があります。病院のように高度な専門性や特殊な設備対応が求められる施設では、比率がやや高めになるケースも少なくありません。事務所によっては延床面積を基準に算定する場合もあるため、必ず見積もり時に算定方法を確認しましょう。
  • 建築工事費実際に建物を建設するための費用です。建物の構造、外装、内装、仕上げなどにかかる費用が含まれ、病院の規模や構造、使用する材料によって大きく変動します。
  • 設備費医療設備、空調設備、電気設備、給排水設備など、病院に必要な設備にかかる費用です。最新の医療機器を導入する場合は、設備費が高額になる傾向があります。
  • その他諸経費申請費用、地盤調査費用、仮設工事費用など、上記以外の費用です。これらもプロジェクトの規模や内容によって変動します。

そして、規模が大きい案件ではもうひとつ、開発費という項目が加わることがあります。

都市計画法などの規定により、一定の規模を超える計画では、その土地の区画整理や開発行為が絡んでくるケースがあります。その場合、建物の設計とは別に開発に関する設計が必要になり、開発そのものの工事費も別途発生します。

この開発費は、事業計画の後半で発覚すると予算が大きく狂います。計画地が開発許可の対象になるかどうかは、土地を決める段階で確認しておいてください。

4-2. 費用を抑えるなら、削る場所を間違えないこと

費用を抑えようとするとき、多くの方がまず設計費用の見積もりを比べます。ただ、ここに時間をかけても、全体コストはほとんど圧縮できません。

設計費用は、高くても建設工事費の20パーセント程度です。規模が大きい案件になれば数パーセントまで下がります。この数パーセントを値切ったところで、全体から見れば誤差の範囲です。

圧縮が効くのは、完全に建設費のほうです。どういう建物を建てるのか。そこの判断が、費用に対して圧倒的に効いてきます。

ですから、設計者としっかりタッグを組んで、建設費をどこまでかけるのか、どこをどう抑えるのかという議論に絞ってください。その一点に集中すれば、建設費は計画の範囲に収まっていきます。

そのための知恵を出し、時間を使い、手を動かしてもらうのが設計者の仕事です。設計費を削るということは、その時間を買えなくなるということでもあります。設計者にはしっかり頑張ってもらう、という考え方で臨んだほうが、結果的に全体の費用は下がります。

  • 設計段階での工夫無駄なスペースを削減し、シンプルな構造を採用することで建築工事費を抑えられます。既製品の活用や、コストパフォーマンスの高い材料の選定も有効です。
  • 設備投資の最適化最新の医療機器をすべて導入するのではなく、必要な機器を見極め、将来的な拡張性も考慮した上で最適な設備投資を行いましょう。中古品の活用も選択肢の一つです。
  • 複数の設計事務所からの見積もり複数の事務所から見積もりを取り、費用や提案内容、得意分野を比較検討した上で最適な設計事務所を選定しましょう。
  • 専門家との連携建築家、設備業者、医療機器メーカーなど各分野の専門家と連携することで、費用対効果の高い設計を実現しやすくなります。

病院設計の費用は高額になりがちですが、適切な予算管理と設計段階での工夫、専門家との連携により、費用を抑えながら質の高い病院設計を実現することが可能です。

5. 成功事例から学ぶ

5. 成功事例から学ぶ

病院設計は、机上の空論ではなく、実際に形になり運用されている取り組みから学ぶことが重要です。本セクションでは、実務でよく見られる工夫のパターンを類型化して紹介します(特定の医療機関の事例を示すものではありません)。

5-1. 成功事例パターン1:総合病院での取り組み

地域医療の中核を担う総合病院では、最新の医療設備と、患者・スタッフに優しい空間設計の両立を目指すケースが多く見られます。患者動線とスタッフ動線を明確に分離して感染リスクを低減し、自然光を最大限に取り入れることで患者の不安を軽減する工夫が施されます。また、最新の医療機器を導入するスペースを確保しつつ、将来的な増築にも対応できるフレキシブルな設計を採用することもポイントです。費用面では、太陽光発電システムやLED照明といった省エネ設備を導入し、初期費用を抑えながら長期的なランニングコスト削減を図る取り組みも見られます。

5-2. 成功事例パターン2:地域密着型クリニックでの取り組み

地域密着型のクリニックでは、患者との距離を縮め、アットホームな雰囲気の中で質の高い医療を提供することを目指すケースが多く見られます。待合室には温かみのある木材を使用し、自然光を取り入れることでリラックスできる空間を演出。診察室はプライバシーに配慮した設計とし、患者が安心して相談できる環境を整えます。スタッフの動線を工夫して業務効率を高めることも重要なポイントです。費用面では、既存の建物を活用した改修工事によりコストを抑えつつ、理想のクリニックを実現する取り組みも多く見られます。デザイン性と機能性を両立させることが、地域住民から愛されるクリニックへの近道といえるでしょう。

まとめ: 理想の病院設計を実現するために

まとめ: 理想の病院設計を実現するために

理想の病院設計を実現するためには、設計事務所との連携が不可欠です。この記事では、病院設計の基本から、設計事務所の選び方、費用相場、実務で見られる工夫のパターンまでを解説しました。

病院設計は、患者とスタッフの安全と快適性を最優先に考え、最新の医療技術に対応できる柔軟性を持つことが重要です。また、費用対効果を最大化するために、適切な予算管理と省エネ設計などの工夫も欠かせません。

設計事務所との円滑なコミュニケーションを図り、専門家と連携することで、理想の病院設計は実現できます。この記事が、皆様の病院設計における成功の一助となれば幸いです。

私たちデザイン建築設計事務所は、医療機関の運営支援を続けながら建築設計を行っています。設計者としてだけでなく、すでに設計事務所が決まっている場合に、医療機関側の立場に立つ設計コンサルタントとして入る形でもご支援しています。病院の新築や建替えでお悩みのことがあれば、お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。

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